491 :名無しさん@おーぷん 2017/07/29(土) 03:17:34 ID:TIU
修羅場というかヒヤリハットに近い事柄

まだ自動車整備科の学生だった時、実習車のマークⅡ(GX100)でエンジン脱着訓練を行った
車体からエンジン、エンジンにくっ付いてるトランスミッションを油圧のベビークレーンで引き出し、また取り付けて試走するという内容だ
3人の班員がおり、分担して作業に掛かった。
さまざまなセンサーやオイルポンプ、コンプレッサといった電気の配線を取り外し、燃料ホースも車体側に残してエンジンから外す。
その間に、もう一人は車の下に潜って動力を後輪に伝えるプロペラシャフトをATから抜いて、マウントからエンジンを外す。
俺は取り外したラジエターやファンの整理とベビークレーンでの吊り上げ準備をしていた。
エンジンをチェーンブロックで大きく傾け、車体に当てないように細心の注意を払って引き抜いた。
エンジンが車体から抜けるとクレーン操作に一人、吊った重量物の振れを抑える補助者が一人の二人でよい。

取り付けはクレーンの二人に加え、ボルト穴を合わせてエンジンをマウントに固定するのに一人必要となる。
俺は車体下に潜ってE/gマウントを固定する担当になった。

「ちょい右!あと2㎝奥に突いて」

などと誘導の声にクレーンがエンジンを上下させて突き込み、補助者がエンジンの傾きを変える。
車体下の俺がマウントを取り付けるともうエンジンが落ちることはないので配管、配線の取り付けを行う。
配線類や、プロペラシャフト、排気管を取り付けて、宙に浮かしていたタンクから来る「燃料パイプ」をエンジン上の人に渡した。

「取り付け完了です!」

エンジン上から声が聞こえて、俺は車体下から出た。
上では手早い二人によって、配線もラジエターもファンベルトも取り付けられており、エンジン試運転が出来るという状況だった。

指導員を呼び、一人が運転席に入ってキーを回すが電力不足で掛からない。
俺はタヒんだ実習車のバッテリーの代わりにバッテリーパックのワニ口をバッテリと車体に取り付ける。
プラス端子が付き、ボデーにマイナス端子を繋ぐとパチっという小さな火花と共に通電した。

「エンジン掛けまーす」

エンジンがキュキュキュと掛かり、喜んだ瞬間、燃料パイプのエンジン側取り付け口の隙間からガソリンの霧が勢いよく噴いた。
俺はもろに燃料の霧を浴び、あたりに濃厚なガソリンの匂いと混合気が広がった。

「エンジン止めろ!ガス(漏れ)!」

俺の叫びに急いで運転席がエンジンを止めたことによって燃料圧送がストップした。
だが、バッテリーパックがまだ付いたままである。夏ということもあって気温も高い。

指導員が日よけに閉じていた実習場のシャッターを全開にし、もう一人は急いで消火器を取りに行く。
そうしている間にも霧となって散布されたガソリンは爆発性雰囲気を作り出そうとしていた。
ガソリンが体温を奪い、作業服から気化していくさまを横目にバッテリーパックのワニ口の端子を見る。
もし、今、電気火花が散ったらおそらく爆発するか、可燃性の俺の体を燃やすだろうと。

強い熱風が吹き込み、ガソリン蒸気の爆発限界を下回りようやくワニ口を外すことが出来た。
その間、ガソリン蒸気に酔って痛い頭で「第六潜水艇の最期」や、「装甲空母」という言葉がぐるぐる回っていた。
装甲空母みたいに実習場が混合気で大爆発、俺は最期まで持ち場を守りタヒにましたということが無くて本当に良かった。

エンジン側配管取り付けの締め付け不良が原因であり、本当に生きた心地がしなかった。